私にとっては「質実剛健」に「ゴルフ」を作り続けているというイメージが強いフォルクスワーゲンですが、満を持して日本のコンパクトSUV市場に参入してきました。
まず2019年11月に日本のコンパクトSUV市場に投入されたのがポロをベースに開発された「Tクロス」。
続いて2020年7月に投入されたのが、ゴルフをベースに開発された「Tロック」。
そして2020年12月にはこの2車種の一部仕様変更を行い、日本での営業を加速させています。
しかしこの2台、名前も見た目もとても似ているので、正直に言ってどちらがどちらなのか良くわかりません。
そこで今回、この2台のカタログデータを比較してみたところ、意外にもこの2台がしっかりと差別化されていることが分かりました。
今回の記事では、フォルクスワーゲンが日本市場に投入したTクロスとTロックの違いについてご紹介したいと思います。
※この記事は2021年3月時点の情報をもとに書いています。
※2021年5月13日に「Tクロス」の最上級グレードとして「TSI R-Line」が設定されました。詳しくは次の記事でご紹介しています。
※2021年5月13日に「Tロック」のガソリンエンジンモデルが追加設定されています。詳しくは次の記事でご紹介しています。
ボディサイズの比較
Tクロスのボディサイズ
- 全長:4,115mm
- 全幅:1,760mm
- 全高:1,580mm
- ホイールベース:2,550mm
- 車両重量:1,270kg
- 最小回転半径:5.1m
Tクロスはポロをベースに開発されました。
Tクロスのボディサイズをポロのボディサイズと比較すると、全長で55mm、全幅で10mm、全高で130mmポロのボディサイズを上回っています。
日本市場では、トヨタのヤリスクロス、日産キックス、マツダCX-3、アウディQ2などと競合するボディサイズです。
このTクロスのボディサイズは、日本の道路事情を考えるととても乗りやすいサイズです。
ただし、T-クロスの全高は1,580mmと、多くの機械式駐車場の高さ制限である1,550mmを上回っているのが残念です。
Tロックのボディサイズ
- 全長:4,240mm
- 全幅:1,825mm
- 全高:1,590mm
- ホイールベース:2,590mm
- 車両重量:1,430kg
- 最小回転半径:5.0m
Tロックはゴルフをベースに開発されたので、TロックのボディサイズはTクロスのボディサイズよりも一回り大きくなっています。
TロックのボディサイズをTクロスのボディサイズと比較すると、全長で125mm、全幅で65mm、全高で10mmTクロスのボディサイズを上回っています。
さらにゴルフのサイズと比較すると、全長は55mm短いのですが、全幅は35mm、全高は115mm大きくなっています。
フォルクスワーゲンのSUVの中では、Tロックはもう1サイズ大きいティグアンとTクロスの間に位置づけされています。
日本市場では、ホンダヴェゼル、スバルXV、マツダCX-30、などと競合するボディサイズです。
ただ、Tロックの全幅はライバル車よりも若干大きめの1,825mmであり、全高も1,590mmと多くの機械式駐車場の高さ制限である1,550mmを上回っています。
一方で最小回転半径は5.0mと、このサイズのSUVの中では最も小さくなっており、切り返しや車庫入れ時にはライバル車よりも有利かと思います。
エクステリアの比較
Tクロスのエクステリア
上の写真はTクロスの「TSI Style」で、ボディカラーは「マケナターコイズメタリック」になります。
Tクロスのボディカラーは、この「マケナターコイズメタリック」を含めて7色から選ぶことができます。
TクロスとTロックのデザインの違いは、後部座席の三角窓の形状に表れています。
Tクロスでは後部座席の三角窓の底辺が斜めになっているのに対して、Tロックでは三角窓の底辺が直線になっています。
また、Tクロスのドアノブはボディサイドの直線ライン上にあるのに対して、Tロックのドアノブは直線ラインの下部に位置しています。
さらに、Tクロスの後部座席の窓枠がポロと同様にやや曲線的なデザインであるため、T-クロスも全体的にやや丸みを帯びたデザインになっています。
Tクロスのデザインは、全般的に日本のマーケットでも受け入れ易いパッケージに仕上がっていると思います。
Tロックのエクステリア
上の写真はTロックの「TDI Sport」です。
カラーはボディ部分が「ピュアホワイト」でルーフが「ブラック」のツートンカラーになります。
Tロックの「TDI Sport」のボディカラーは、この「ピュアホワイト」を含めて7色から選ぶことができます。
Tロックのデザインは、ベースとなったゴルフと同様に直線的なラインが強調されています。
フォルクスワーゲン自らTロックを「クーペSUV」と呼ぶだけあり、日本で販売されるSUVの中でもボディのシャープさが際立っていて、存在感のあるデザインに仕上がっています。
インテリアの比較
T-クロスのインテリア
Tクロスのインテリアで最も特徴的なのは、オプションとして従来のアナログ式メーターに代わり、大型ディスプレイによる「デジタルメータークラスター」が設定されていることです。
この大型ディスプレイには、基本となる速度計とタコメーターに加え、ナビゲーションモードを選択すると画面中央にマップが大きく映しだされます。
画面の切り替えは、Tクロスのステアリングホイールのボタンで簡単に行うことができます。
Tクロスのシート等のカラーリングは、「TSI Style」が「チタンブラック/ブラウン」、「TSI Active」は「チタンブラック/グレー」になります。
Tロックのインテリア
Tロックのインテリアでも最も特徴的なのは、従来のアナログ式メーターに代わり、大型ディスプレイによる「デジタルメータークラスター」が標準装備されていることです。
Tクロス同様、このディスプレイには基本となる速度計とタコメーターに加えて、ナビゲーションモードを選択することにより画面中央にマップを大きく映し出すことが出来ます。
また、Tロックの「TDI Style Design Package」のグレードでは、ダッシュボードやシートのステッチの色を「ブラック」「イエロー」「ブルー」の3色から選ぶことができます。
なお、「TDI Sport」のダッシュボードは「ダークグレー」、「TDI R-Line」のダッシュボードは「グレー」のカラーリングとなります。
パワーユニットの比較
Tクロスのパワーユニット
Tクロスのパワーユニットは、ポロにも採用されている「3気筒1リットルターポエンジン」のみとなります。
このダウンサイジングエンジンは、1リットルの排気量ながら116ps・20.4kgmのパワーを発揮することが出来て、街乗りが中心であれば実力としては申し分ありません。
ドイツ本国で販売されているTクロスには、「4気筒1.5リットルのターボエンジン」と「4気筒1.6リットルのディーゼルエンジン」も採用されているのですが、日本ではTロックとの差別化を図るためか、1種類のみの展開となっています。
駆動方式はFFのみで、トランスミッションは7速DCTになります。
Tロックのパワーユニット
Tロックのパワーユニットは、「4気筒2リットルのディーゼルエンジン」のみとなります。
このエンジンは日本で販売されているティグアンにも採用されており、150ps、34.7kgmのパワーがあります。
低回転域から力強いトルクを発生させ、特に高速道路などを気持ちよくクルージングできると定評のあるエンジンです。
ドイツ本国で販売されているTロックにはガソリンエンジンも採用されているのですが、日本版ではディーゼルエンジンのみの展開となっています。
駆動方式はFFのみで、トランスミッションは7速DCTになります。
グレード・価格の比較
T-クロスのグレード・価格
エンジン | グレード | ミッション | 駆動方式 | 車両本体価格 |
1.0L直3ターボ | TSI Active | 7速DCT | FF | 278万円 |
TSI Style | 7速DCT | FF | 303万円 |
T-クロスのグレードは、「TSI Active」と「TSI Style」の2種類で、両者の価格差は25万円になります。
「TSI Active」と「TSI Style」の装備における最も大きな違いは、「TSI Style」には「アダプティブ・クルーズ・コントロール”ACC”(全車速追従機能付き)」が標準装備されることです。
その他にも、「TSI Style」にはダッシュボード下のインテリアアンビエンライト、パドルシフト、シルバールーフレール、スポーツコンフォートシートなどが装備されます。
「TSI Active」の足回りには16インチアルミホイールを装着し、「TSI Style」には17インチアルミホイールを装着。
なお、「TSI Active」と「TSI Style」ともに、上級クラスの車種と同等の先進安全機能が装備される「セーフティーパッケージ」というオプションが用意されています。
「セーフティーパッケージ」のオプションを追加すると、「TSI Active」の価格は308.8万円、「TSI Style」の価格は331.6百万円となります。
さらに「デジタルメータークラスター」を装備するために「テクノロジーパッケージ」のオプションも追加すると、「TSI Active」の価格は315.9万円、「TSI Style」の価格は338.7百万円となります。
T-ロックのグレード・価格
エンジン | グレード | ミッション | 駆動方式 | 車両本体価格 |
2.0L直4ディーゼルターボ | TDI Style Design Package | 7速DCT | FF | 404.9万円 |
TDI Sport | 7速DCT | FF | 418.9万円 | |
TDI R-Line | 7速DCT | FF | 452.9万円 |
Tロックは「TDI Style Design Package」「TDI Sport」「TDI R-Line」の3グレードで展開されています。
「TDI Style Design Package」はベースグレードですが、他のグレードには無いボディカラーとインテリアカラーを選ぶことができます。
ただし、「TDI Style Design Package」の安全装備に関しては、「パークディスタンスコントロール」と「オプティカルパーキングシステム」の設定がありません。
「TDI Style Design Package」の足回りには17インチのアルミホイールが装着されます。
「TDI Sport」にはゴルフとほぼ同等の装備が標準装備となっており、スポーツシートも装着されます。
「TDI Sport」の足回りには18インチのアルミホイールが装着されます。
「TDI R-Line」には「TDI Sport」と同等の装備に加え、エクステリアには専用のフロントバンパーが装備されます。
「TDI R-Line」の足回りには扁平率40のタイヤに19インチのアルミホイールが装着されます。
先進安全装備の比較
Tクロスの先進安全装備
先進安全装備 | TSI Active | TSI Style |
アダプティブクルーズコントロール”ACC”(全車速追従機能付) | △ | 〇 |
レーンキーピングアシスタントシステム”Lane Assist” | △ | △ |
スタティックコーナリングライト | 〇 | 〇 |
ハイビームアシスト | △ | △ |
リヤビューカメラ”Rear Assist” | 〇 | 〇 |
駐車支援システム”Park Assist” | △ | △ |
デイタイムランニングライト | 〇 | 〇 |
ブラインドスポットディテクション(後方死角検知機能) | △ | △ |
ドライバー疲労検知システム”Fatigue Detection System” | 〇 | 〇 |
パークディスタンスコントロール(フロント/リヤ、前進/後退時衝突軽減ブレーキ機能付) | △ | △ |
オプティカルパーキングシステム | △ | △ |
リヤトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能) | △ | △ |
プリクラッシュブレーキシステム”Front Assist”(歩行者検知対応シティエマジェンシーブレーキ機能付) | 〇 | 〇 |
プロアクティブ・オキュバンド・プロテクション | 〇 | 〇 |
ESC(エレクロロニック・スタビリティ・コントロール) | 〇 | 〇 |
ABS(アンチロック・ブレーキング・システム) | 〇 | 〇 |
ブレーキアシスト | 〇 | 〇 |
※△は「セーフティパッケージ」のオプションを選択することにより付帯される装備です。
Tクロスでは、上級クラスの車種と同等の先進安全機能はオプションとして用意されています。
「TSI Active」では30.8万円増、「TSI Style」では28.6万円増になりますが、これらの機能はぜひ装備したいものです。
Tロックの先進安全装備
先進安全装備 | TDI Style Desing Pacage | TDI Sport | TDI R-Line |
アダプティブクルーズコントロール”ACC”(全車速追従機能付) | 〇 | 〇 | 〇 |
レーンキーピングアシスタントシステム”Lane Assist” | 〇 | 〇 | 〇 |
スタティックコーナリングライト | 〇 | 〇 | 〇 |
ハイビームアシスト | 〇 | 〇 | 〇 |
リヤビューカメラ”Rear Assist” | 〇 | 〇 | 〇 |
駐車支援システム”Park Assist” | 〇 | 〇 | 〇 |
デイタイムランニングライト | 〇 | 〇 | 〇 |
ブラインドスポーットディテクション(後方死角検知機能) | 〇 | 〇 | 〇 |
ドライバー疲労検知システム”Fatigue Detection System” | 〇 | 〇 | 〇 |
パークディスタンスコントロール(フロント/リヤ、前進/後退時衝突軽減ブレーキ機能付) | ― | 〇 | 〇 |
オプティカルパーキングシステム | ― | 〇 | 〇 |
リヤトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能) | 〇 | 〇 | 〇 |
プリクラッシュブレーキシステム”Front Assist”(歩行者検知対応シティエマージェンシーブレーキ機能付) | 〇 | 〇 | 〇 |
プロアクティブ・オキュバンド・プロテクション | 〇 | 〇 | 〇 |
ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール) | 〇 | 〇 | 〇 |
ABS(アンチロック・ブレーキング・システム) | 〇 | 〇 | 〇 |
ブレーキアシスト | 〇 | 〇 | 〇 |
Tロックでは、ベースグレードである「TDI Style Desing Pacage」以外のグレードでは、先進安全装備が標準装備となります。
この部分でも、T-クロスとの差別化が行われています。
燃費の比較
モード | T-クロス | T-ロック |
JC08モード | 19.3 | 19.5 |
WLTCモード | 16.9 | 18.6 |
市街地モード(WLTC-L) | 13.2 | 14.9 |
郊外モード(WLTC-M) | 17.1 | 18.5 |
高速道路モード(WLTC-H) | 19.1 | 21.0 |
※単位:km/L
カタログ上の数値ではありますが、燃費に関してもTロックがTクロスを上回っているようです。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
TクロスとTロックはともにFFだけの設定で、ベースモデルの面影を残したクロスオーバーSUVであるため、そのキャラクターやデザインはとても良く似ています。
しかし、車両サイズやパワートレイン、装備をチェックしてみると、TロックはTクロスの上位車種であることがわかりました。
TクロスとTロックの価格も、相応に差が付けられています。
私の個人的な意見ですが、Tロックに1.4リットル直4ターボの設定があれば、かなり魅力的な1台になったような気がします。
この記事がみなさんのお役に立てばうれしいです。