今回の記事では、ドイツの「JACDEC」(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)が毎年作成している航空会社の安全性ランキングをご紹介します。
「JACDEC」がウォッチしているのは世界の主要航空会社60社で、毎年独自の手法で「安全指数」を算出して公表しています。
安全性格付けの場合には、あるランクに該当する企業をグルーピングしますが、「JACDEC」の場合には1番から60番まで順位を付ける正真正銘のランキングを発表しています。
前回ご紹介した「AirlineRatings」とは格付けの手法は異なっていますが、「IOSA」認証取得の有無や過去の死亡事故を考慮するなど、査定するにあたって共通の事項もあります。
また、その国の航空当局の能力や透明性を重視するなど、個々の会社だけではなくて国の航空安全管理能力に着目している点も共通しています。
それでは「JACDEC」の航空会社の安全性ランキングをご紹介します。
「JACDEC」の安全性ランキングについて
ランキングのポイント
「JACDEC」(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)では、毎年世界の主要航空会社60社の「安全指数」を算出して公表しています。
「安全指数」は後でご紹介する8つの要素をベースとして算出されていて、数値が低いほど安全性が高く、数値が高いほど安全性が低くなります。
ランキングの結果では、安全性が高い会社から順番に順位が記載されています。
太線で書かれているのは、日本の航空会社と日本に乗り入れている航空会社です。
ランキングの結果
- キャセイパシフィック航空(香港)
- エミレーツ航空(UAE)
- エバー航空(台湾)
- カタール航空(カタール)
- 海南航空(中国)
- KLMオランダ航空(オランダ)
- ニュージーランド航空(ニュージーランド)
- エティバド航空(UAE)
- 日本航空(日本)
- TAPポルトガル航空(ポルトガル)
- ジェットブルー航空(アメリカ)
- ルフトハンザ航空(ドイツ)
- カンタス航空(オーストラリア)
- ヴァージンアトランティック航空(イギリス)
- 全日空(日本)
- エアカナダ(カナダ)
- デルタ航空(アメリカ)
- ブリティッシュエアウェイズ(イギリス)
- 四川航空(中国)
- エアベルリン(ドイツ)
- ウェストジェット航空(カナダ)
- ヴァージンオーストラリア航空(オーストラリア)
- 深圳航空(中国)
- サウスウェスト航空(アメリカ)
- イベリア航空(スペイン)
- イージージェット(イギリス)
- ジェットスター航空(オーストラリア)
- ノルウェーエアシャトル(ノルウェー)
- トムソン航空(イギリス)
- シンガポール航空(シンガポール)
- ユナイテッド航空(アメリカ)
- スイスインターナショナルエアラインズ(スイス)
- 中国東方航空(中国)
- ライアンエアー(アイルランド)
- ジェットエアウェイズ(インド)
- アエロフロート・ロシア航空(ロシア)
- ラン航空(チリ)
- アリタリア航空(イタリア)
- エアインディア(インド)
- エールフランス(フランス)
- アメリカン航空(アメリカ)
- 中国国際航空(中国)
- アラスカ航空(アメリカ)
- 中国南方航空(中国)
- タイ国際航空(タイ)
- アシアナ航空(韓国)
- スカンジナビア航空(スウェーデン)
- アエロメヒコ(メキシコ)
- 大韓航空(韓国)
- ターキッシュエアラインズ(トルコ)
- コパ航空(パナマ)
- ゴル航空(ブラジル)
- サウジアラビア航空(サウジアラビア)
- TMA航空(ブラジル)
- マレーシア航空(マレーシア)
- ガルーダインドネシア航空(インドネシア)
- アビアンカ航空(コロンビア)
- チャイナエアラインズ(台湾)
- ライオンエア(インドネシア)
- ベトナム航空(ベトナム)
「JACDEC」安全指数について
「JACDEC」のwebサイトに面白いことが書いてあったのでご紹介します。
「JACDEC」が長年にわたり航空会社の安全性を分析してきた経験上、航空会社の安全性とその国の航空当局の能力・透明性との間には明らかに関連性があるというのです。
そこで「JACDEC」では、ICAO(国際民間航空機関)が加盟国の航空安全行政を監査するUSOAP( Universal Safety Oversight Audit Programme:国際航空安全管理監査)の報告に注目しているそうです。
この点は、前回ご紹介したオーストラリアの「エアラインレイティングス」と共通しています。
航空安全行政に問題がある国の航空会社は危ないということですね。
また航空当局の透明性は、国によって大く異なるようです。
「JACDEC」が透明性は良好だと考えている国は、アメリカ・イギリス・カナダ・フランス・オーストラリア、さらにブラジル・コロンビア・南アフリカ・ドイツ・インドネシア・日本・台湾で、安全性指数にもポジティブなインパクトがあったようです。
一方、中国・マレーシア・タイ・トルコ・メキシコは航空機事故の報告が散発的になされるなど当局の透明性に問題があり、安全性指数が低くなったようです。
「JACDEC」安全指数は、現在は主に次の8つの要素をベースに算出されています。
キロ当たり年間旅客収入
「JACDEC」では航空会社のパフォーマンスを判断するためにキロ当たり年間旅客収入(Annual Revenue Passengers Kilometers「RPKs」)を使用しています。
死亡者数
死亡者数については、過去30年間の有償旅客の死亡者数を使用しています。(旅客として航空機に搭乗してから降りるまでの間の死亡者数)
機体喪失数
躯体喪失数(No. of Total Losses)とは、いわゆる機体喪失事故(Hull Losses)の発生件数のことです。
重大インシデント発生件数
重大インシデント発生件数(No. of Serious Incidents)は「JACDEC」安全指数の算出においては比較的新しい要素です。
「JACDEC」安全指数の算出にあたっては「重大インシデント発生件数」は「機体喪失数」よりウェイトが低くなります。
無事故期間の年数
無事故期間の年数(Accident-Free Years)とは、最後に機体喪失事故が発生してから直近までの年数のことです。
「IOSA」の認証
IOSA(国際運航安全監査プログラム)とは国際航空運送協会(IATA)が運営する国際的な運航安全監査プログラムのことです。
現在では300社を超える航空会社がIOSAの認証を受けているので、「JACDEC」安全指数へのインパクトは小さくなっています。
時間ファクター
「JACDEC」安全指数の算出にあたっては、過去の事故は新しい事故よりも寄与度を低くしています。
航空機事故から年数が経つほど、「JACDEC」安全指数へのインパクトは小さくなっていきます。
その国の透明性
2013年から「JACDEC」安全指数の算出における新しい要素として、その国の航空機事故調査当局の透明性(Country Transparency)を加えています。
また、「JACDEC」では次の通り透明性のレベルを定めています。
- レベル1:航空機事故調査に関連するすべてを公表する国
- レベル2:一つの事柄若しくはごくわずかな事項しか公表しない国
- レベル3:航空機事故調査について全く公表しないか関連する当局が存在しない国
「JACDEC」webサイトの安全指数に関するページはこちら。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
不思議なもので、安全性ランキングの上位にはサービスに定評があり顧客満足度が高い航空会社が並んでいます。
JALとANAも比較的に上位にランクされていて良かったです。
一方でワースト10にはアジア・南米・中東の航空会社がずらりと並びました。
「エアラインレイティングス」とは異なる評価の会社もあり、なかなか興味深い結果になりました。
ただ、「エアラインレイティングス」と「JACDEC」の両方で評価が低い会社でも、その航空会社しか飛んでいない路線の場合には乗らなければならないのが辛いところです。
この記事がみなさんのお役に立てばうれしいです。